ぽに平野

インターネット

のらきゃっとの顔バレに見るVtuberの立ち位置

今日、インターネットのオタク達の間でバーチャルYouTuberなるものが熱を持ち始めている。今日はそれについて書こうと思う。

 

昨年の12月中頃であろうか、とあるユーザーのブログに端を発し、バーチャルのじゃロリ狐娘YouTuberのねこます氏が爆発的な人気を博した。ねこます氏は自分のようなおっさんでも美少女になれることを証明したい、そして日夜世知辛さに身を削る同士を救いたいという動機で動画を投稿しているようだ。そのスピリッツに多くのオタクが感銘を受け、美少女の外見に男性の地声という特異なスタイルにも関わらず多くの支持を集めている。

 

そんなねこます氏の登場に起因するアマチュアバーチャルユーチューバー(以下Vtuber)戦国時代は数多の新規参入と古参クリエイターの発掘を引き起こした。(以前からキズナアイ氏などは人気を得ていたがここではアマチュアVtuber(及び仮想キャラコンテンツ)について述べる)

 

その古参クリエイターの中で私が言及したいのがのらきゃっと氏についてだ。氏はねこます氏の登場以前からニコ生で密かな人気があったキャラクター(この表現が適切であるかはさておき)であり、このVtuberムーブメントに乗りVtuber活動を始めた、優雅な立ち振る舞いや甘美なセリフ、聴き触りの良い合成音声を用いたスタイルで人気の猫耳型モデルのVtuberである。

 

そんなのらきゃっと氏であるが、先日生放送中にクリエイター(中の人)の表情のトラッキング画面が表示されてしまい、顔バレしてしまうという事件が起きた。仮想美少女というコンテンツの性質上、通常の配信者の顔バレとは一線を画す致命的な事件になると思われた。

 

しかしのらきゃっと氏の中身が(けなす意味などの他意は無く)ただのオッサンということが明るみになったにも関わらず、ファンの間には"これで安心してガチ恋できる"、"これはバレではなく生産者表示"、"好感度上がった"などの好意的な意見が散見された。

 

私はこの現象を見てVtuberの人気はただの"美少女コンテンツ"とは異質なものであると感じた。この一件は、アマの美少女Vtuberは、オタク向けに商業化された偶像とは一線を画しているもので、オタクを救うためのオタクがオタク同志の共通認識を抽出した末に生み出した"不純物のない仮想女性像"であるべきだという事を如実に表しているのではないかと考えた。

 

その人気に介在する感情は実存の女性を好きになるものとは完全に乖離していて、どこまでもキャラクタライズされ、しかし精神的に近い位置に存在するというVtuber特有の性質に惹かれるものなのではないかと考えた。

 

昨今のオタクは"受け身"、"弱い"と揶揄されることが多いが、以上に述べた事象についてもその一端を見ることができるかもしれない。仮想美少女に恋するオタクは過去幾年の歴史の中で常に存在したが、"オタクが美少女側にまわる"ことによって、より精神的な安寧が得られるコンテンツとなった。と、ねこます氏の人気、のらきゃっと氏の事件から推察できる。

 

長々と書いてきたが、この流れは情報化社会に伴うコンテンツの在り方の多様化、及びVR、AR、MRの技術の商業応用の好例として捉えることができるだろう。

10年の歴史を経て一大コンテンツとなったVOCALOIDからも読み取れるが、技術の発展がホームユーザーのクリエイティビティを刺激するのは火を見るより明らかである。このムーブメントがネットコンテンツとして定着し、VR技術の促進へ繋がることを切に願うばかりである。